日清戦争で戦場となった地域
日清戦争で
戦場となった地域
(黄は陸戦、赤は海戦)
 
 
カイゼン視点から見る
日清戦争
The Sino-Japanese War of 1894-95 from Kaizen Aspect

日清戦争の本・資料 − 朝鮮近代史 B

砂本文彦 『図説ソウルの歴史』
趙景達 『近代朝鮮と日本』
金重明 『物語 朝鮮王朝の滅亡』
NHK DVD 『日本と朝鮮半島2000年
脱亜″への道』

上 日本陸軍の旅順西方砲撃 下 日本海軍の速射砲砲撃
上 日本陸軍の
旅順西方砲撃
下 日本海軍の速射砲砲撃
(日清戦争写真帳より)
 
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カイゼン視点から見る 第一次世界大戦

朝鮮近代史に関する参考図書のつづきです。


砂本文彦
『図説 ソウルの歴史−漢城・京城・ソウル 都市と建築の600年』
河出書房新社ふくろうの本 2009

ソウルの歴史に焦点が当てられています。写真が多用された「図説」ですので、王宮と都市の変遷・発展が、具体的によく理解できます。

1894−95年当時の、日本軍のソウル市内と周辺での行動を、現代のソウルの地図によって理解することは、困難であるように思います。本書によって、当時の具体的なイメージをつかむことが可能になります。

ただし、本ウェブサイト中では、本書からの引用等は行っていません。


趙景達 『近代朝鮮と日本』
岩波新書 2012

金重明 『物語 朝鮮王朝の滅亡』
岩波新書 2013

2012〜13年に、岩波新書から2冊、朝鮮の近代史に関する本が出ています。どちらも、この分野についての、いわば入門書の位置づけであろうかと、想定いたします。

この2冊のうちでは、後に出た金重明 『物語 朝鮮王朝の滅亡』の方が、より読みやすく、記述のバランスも良いように感じました。記述の量は、活字の大きさには反比例してしまうため、紙数の制約から内容が舌足らずになっている、という印象もあります。しかし、読書を広げていくための入口としてはよく出来ている、と評価できるように思います。

もう片方の趙景達 『近代朝鮮と日本』についてですが、この2冊の中では、こちらの方が記述が相対的に詳細です。しかし、「政治文化の問題を糸口」にしていて、経済や財政にはあまり触れられていない、という制約があるように感じました。また、朝鮮の伝統的な政治文化について、「儒教的民本主義」がキーワードとして使用されていますが、多義を持つ言葉であり、キーワードとすることが適切であったかどうか。

「儒教的民本主義」が、経済的社会的には具体的に何を意味するかがいま一つ明確ではないように感じました。また例えば江戸期の日本の農本主義(これも「儒教的民本主義」と言えないことはない)とどういう相違があったか、という比較も不十分と思います。その結果としてかえって、当時の朝鮮が、具体的にどのような経済的社会的状況にあり、重要課題は何であったのか、対策は打たれていたのか、などの解明が曖昧になってしまったのではないか、とりわけ19世紀の後半という時点で「儒教的」であることと「民本主義」の実現とに対立はなかったのか、またそれが、独立を維持するための政策を阻害しなかったか、などの課題への追求が不十分になっているように感じました。

また、この2冊を読んでみて、入門書から一歩先に進むときは、今も、姜在彦や山辺健太郎の著作の価値は非常に高いと、あらためて感じました。

なお、本ウェブサイト中では、この2書からの引用等は行っていません。


NHK DVD
ETV特集 『日本と朝鮮半島2000年 第10回
脱亜″への道 江華島事件から日清戦争へ』
2010年1月31日放送

これは、本ではなく、NHKが2010年にETVで放送した番組のDVDです。同じシリーズの別の回を、秀吉の朝鮮侵攻に関する本・資料のところで取り上げました。

今回の内容は、江華島事件、壬午軍乱、甲申事変と金玉均暗殺事件、およびその間の福沢諭吉と金玉均との交流などに絞られてはいましたが、やはり1時間半という時間制約のなかでは、全体に舌足らずの印象は免れません。

特に、壬午軍乱は、開国後の日本への米輸出を原因とする米価高騰のせいであったとされてしまっており、根本にあった朝鮮政府の財政危機と、その原因となった閔氏勢道政治による官僚の著しい腐敗には何も触れられていなかった点は、学術的に見て適切とは言いがたいように思われます。すなわち、当時の朝鮮が抱えていた政治経済体制の最大課題が、提示されぬままに終わってしまいました。

そこに触れない結果として、甲申事変を起こしてしまった朝鮮の急進改革派の焦りも、改革派を支援していた福沢諭吉の失望の大きさも、さらには10年後の東学乱の発生の原因も、説明不足となっていたように思います。

また福沢について、日韓で評価がまったく異なるという話は出たものの、なぜそうなのかの理由の説明も不十分でした。時事新報の論説にすべて福沢が関与してきたと解するかどうかによって、二つの福沢像が存在してきた、という説明がまったく省かれていたためです。

しかし、映像としては、例によってNHKらしく、なかなかのものが含まれており、その点は多少の価値があるように思います。特に江華島事件については、海上から見た江華島事件の現場や、江華島事件の地図での説明、雲揚丸艦長井上良馨の報告書の現物など、面白いものがそろっていました。ただし、ソウルや東京は当時と現在とでは変化しすぎているせいでしょうか、江華島事件以外は面白い映像は少なかったように思いました。

この番組については、DVDが市販されています。また大きな公立図書館なら、そのDVDを所蔵していて借り出せる、という可能性があります。


次は、朝鮮の経済史、および当時の経済状況、さらに当時の日朝の経済関係に関する参考図書・論文です。


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