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日清戦争の総合的研究として、まずはその代表的なものであり、また手に入りやすく読みやすい4冊について、です。 藤村道生 『日清戦争−東アジア近代史の転換点』
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日清戦争に至る経緯から、開戦外交、戦争の経過、日本の対朝鮮政策、講和と三国干渉、台湾占領、日清戦後の日本と東アジアまで、日清戦争の全般にわたって、新書という制約の中で、全体のバランスよく、また非常に分かりやすく記述された名著であると思います。 出版からすでに40年ほど経過し、決して新しい本ではありません。また、内容の中には、その後の研究の進展の結果、修正が妥当と思われる点も一部にないではありません。 しかし、日清戦争を1冊で理解する、というなら、未だに本書を上回る内容の本は出ていないのではないでしょうか。 本書は、今は新本では出ていないようです。岩波新書全体の中でもレベルが高い優れた本であるのに、それが継続して出版されていないのは、天下の岩波新書として、残念な気がします。 ただし、古書で容易に手に入ります。 |
本書は、本ウェブサイト中でもっとも多くの引用を行っている本です。以下のページで、引用等を行っています。
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岩波新書の、幕末から戦後までを扱った「シリーズ日本近現代史」の1冊で、通史の一部として書かれています。 本書では、第一回帝国議会の1890年から、韓国併合の1910年までの約20年間について、初期議会、条約改正、日清戦争、台湾征服戦争、日清戦後と国民統合、民友社と平民社、日露戦争と韓国併合、の各章が記述されています。 この著者には、日清戦争の軍事的な展開に集中して記述した『日清戦争』という著書もあるためだと思いますが、本書の内容は、それとは重なっておらず、日清戦争期の前後の日本国内の政治情勢や、国内の新聞報道、などを中心としていて、新書らしく読みやすく記述されています。 日清戦争に至る時期の議会の動向などを含め、藤村『日清戦争』では詳しくは記されていなかった部分が詳述されているとも言え、その点で本書も価値があります。 |
本書からは、本ウェブサイト中の下記のページで引用等を行っています。
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本書は、「日清戦争の全体像を明らかにするのが目的」であり、下記の構成になっています。 第1章 朝鮮出兵事件と日朝・日清開戦 「秘蔵写真が明かす真実」という副題は、『日清戦争写真帳』などの写真が多数使われているからです。 しかし、写真のはめ込まれた位置が、本文の記述内容から若干ずれている場合もあって、せっかくの写真が効果を十分に発揮しきっていないところもある点が、誠に残念です。 |
通例の研究書が取り上げている観点に加えて、国民や兵士といった、いわば社会史的な観点も網羅している点に、本書の特徴があります。
また、本書は、日清開戦について、無思想で場当たり的な対応の結果として戦争に至ったとの見解を提示し、ある程度意図的に開戦されたと考える従来説から転回している点で、重要さがあると思います。
なお、著者は台湾征服戦を「日台戦争」と名づけた点で、論争の元にもなりました。その点はともかく、本書は、他の研究書ではあまり取り上げられていない講和後の台湾平定について、軍事・行政の両面から詳細に検討している点でも、価値があると思います。
本書からは、本ウェブサイト中の下記のページで引用等を行っています。
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日清開戦120年に出版された本書は、最新の研究成果が反映されており、日清戦争への入門書として、高い価値があるように思います。 本ページの冒頭に挙げた藤村道生 『日清戦争』(岩波新書)と比較すると、下記の特徴があります。
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藤村著書は、日清戦争に関わる政治・外交・軍事の各側面についての記述が豊かでバランスが取れている点に特徴がありますので、本書が出たからと言って、藤村著書がその価値を失ったわけではない、と言えます。従って、本書と藤村道生 『日清戦争』(岩波新書)の2冊をセットにして、まずは藤村著書を読み、次に本書を読む、という読み方をお奨めします。
また、本書巻末の参考文献リストには、本ウェブサイトの参考図書リストに入っていないものが多数リストアップされているだけでなく、重要なものにはコメントも付されていて、非常に役に立つと思います。
なお、本書には一つだけ、読み方に注意が要ると思われる点があります。日清間の争いの対象となった朝鮮の、当時の状況に関する記述についてです。
本書は全般に、経済的な背景・状況の説明が少ないという印象がありますが、特に朝鮮について、当時の深刻な財政危機の状況と、その本質的な原因であった李朝の政治経済体制の行詰りについての記述が、十分ではないように思います。その結果として、当時の朝鮮国内の政治勢力には反日か否かの2派対立しかなかったかの如く、誤解されかねないように思いますが、いかがでしょうか。
平壌戦・黄海海戦と第二次農民戦争鎮圧を合わせて、「朝鮮半島の占領」という表題の下に記述されていますが、朝鮮国内でも、清国軍との交戦地以外への派兵規模は、全土で3000人にも満たなかったのですから、この表題もミスリーディング、という気がします。
そうした点はあるものの、藤村著書のうちで見解が修正されるべき点が指摘された読みやすい入門書として、非常に価値がある、と言えるように思います。
本書からは、下記のページで引用等を行っています。
総合的研究の研究書が、続きます。