日清戦争の講和から3年後に発表された小説です。文体は古いので、最初は読みにくさを感じるかもしれませんが、独特のリズムがあり、すぐに慣れて引き込まれます。
日清開戦時の陸軍大臣で第二軍司令官となった大山巌の長女の実話を題材にして、肺結核になったがために、無理やり離縁させられた「浪子」と「武雄」の物語として描かれています。
ただし、「実話」ではなく「小説」として書かれており、大山家の事実とはいろいろ相違があったことが、児島襄 『大山巌』第4巻や、久野明子 『鹿鳴館の貴婦人
大山捨松』に指摘されています。
日清戦争の前から後にかけて、という時代設定であり、ストーリーの展開上から、日清戦争の旅順攻略戦の状況描写も出てきます。それだけでなく、その時代を示す描写が作品の各所に散りばめられています。
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