日清戦争で戦場となった地域
日清戦争で
戦場となった地域
(黄は陸戦、赤は海戦)
 
 
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日清戦争
The Sino-Japanese War of 1894-95 from Kaizen Aspect

日清戦争の本・資料 - 時代背景がわかる小説

徳冨蘆花 『不如帰』
樋口一葉 『たけくらべ』

上 日本陸軍の旅順西方砲撃 下 日本海軍の速射砲砲撃
上 日本陸軍の
旅順西方砲撃
下 日本海軍の速射砲砲撃
(日清戦争写真帳より)
 
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日清戦争を時代背景とした小説

まずは、日清戦争期(1894-95)、またはその後間もない当時に、その時代を背景にして書かれた小説です。

徳冨蘆花 『不如帰』 岩波文庫
初出 1898(明治31)〜99(明治32)年


徳富蘆花 不如帰 表紙写真

日清戦争の講和から3年後に発表された小説です。文体は古いので、最初は読みにくさを感じるかもしれませんが、独特のリズムがあり、すぐに慣れて引き込まれます。

日清開戦時の陸軍大臣で第二軍司令官となった大山巌の長女の実話を題材にして、肺結核になったがために、無理やり離縁させられた「浪子」と「武雄」の物語として描かれています。

ただし、「実話」ではなく「小説」として書かれており、大山家の事実とはいろいろ相違があったことが、児島襄 『大山巌』第4巻や、久野明子 『鹿鳴館の貴婦人 大山捨松』に指摘されています。

日清戦争の前から後にかけて、という時代設定であり、ストーリーの展開上から、日清戦争の旅順攻略戦の状況描写も出てきます。それだけでなく、その時代を示す描写が作品の各所に散りばめられています。

例えば、登場人物の一人で、「陸軍その他官省の請負を業とする」「山木」は、新聞の号外を見て、「うう朝鮮か…東学党ますます猖獗…なに清国が出兵したと…。さあ大分おもしろくなって来たぞ。これで我邦も出兵する ― 戦争になる ― さあもうかるぜ」とつぶやきます。

日清戦争を研究する立場からも、本書は読む価値が十分にあると思います。

樋口一葉の一連の作品、『たけくらべ』 など
1895(明治28)〜96(明治29)年発表


樋口一葉 たけくらべ 表紙写真
(写真は河出文庫版)
樋口一葉は、1892(明治25)〜96(28)年に作品を次々に発表しました。まさしく日清戦争の直前〜戦中〜直後の期間です。『不如帰』と大差のない時期に書かれたていますが、一葉の文体は蘆花とは大きく異なり擬古文で読みにくいため、筆者は河出文庫の現代語訳に頼りました。

一葉の作品の中では、日清戦争が取り上げられてはいないようですが、この当時、明治20年代の後半を物語るさまざまな事物が、描写の中に出て来ます。

例えば、代表作の『たけくらべ』では、吉原への客の往き帰りで「人力車」が忙しかったり、花魁の上客が「銀行家」や「兜町」の人であったり、金持ちの子供の遊びに「幻燈」があったり。

小説の読み方としては邪道かもしれませんが、社会経済学史的な観点から読んでみると、いろいろ発見できると思います。


次は、日清戦争を主題として、後の時代に書かれた小説です。

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