7 日清戦争の結果
ここまで、日清戦争の経過から講和までを、確認して来ました。また、戦争の本来の目的であった朝鮮での影響力の拡大について、戦中・戦後の状況も確認してきました。
藤村道生 『日清戦争』 は、「日清戦争は軍事的には清国を圧倒しながらも、政治的には失敗の戦争であった。三国干渉をみちびきだして、戦争目的であった朝鮮内政改革=朝鮮の植民地化を達成できなかったからである」と総括していますが、それが具体的に確認できたと思います。
それでは、日清戦争の結果としては何が生じたのでしょうか。ここでは、その概観を行うとともに、そのうちで昭和前期の敗戦に至るまでの日本の政治・経済・社会に特に大きな影響を与えた事項について、詳しく確認していきたいと思います。
日清戦争の結果は、東アジアの不安定化と日本の政治経済の歪み
日清戦争の結果として何が生じたか
日清戦争の結果・意義について、藤村道生の上掲書は、下記の事項を挙げています。
● 軍事的意義 - 軍国主義と軍事的天皇制イデオロギーの確立
● 外交史上の意義 - 列強の中国分割、アジアにおける帝国主義体制の成立
● 日本の国民的課題 - 明治維新以来の国民的課題である独立の達成、
● 欧米列強との対等性の獲得、国民的自負心
● 日本経済 - 日本資本主義の飛躍的な発展、近代労働運動の開始
● アジアの民族運動 - 朝鮮の義兵運動や清国の五・四運動など
● 日本の対アジア姿勢 - アジア民族運動の抑圧者、日中50年戦争の開始
このうち、「列強の中国分割」は、世界史的にも非常に重大であり、この点から、日清戦争は日露戦争よりも重大な影響を与えた戦争である、と言われています。
「第7章 日清戦争の結果」の内容構成
そこで、ここからは、とくに以下の3点について、確認してまいります。
1) 列強の中国分割競争の開始と、東アジアの不安定化
2) 日本国内での「戦争ビジネスモデル」幻想の成立
3) 日清戦後の日本の軍拡と、その結果としての日本資本主義の歪み
7a 東アジアの不安定化
日清戦争後は、列強による清国の分割競争が開始されます。列強は、清国から次々に利権や租借を獲得、また、極東での軍備力も強化して、日清戦争前よりも東アジアは不安定化していきます。その状況の詳細を確認します。
7b 戦争ビジネスモデル幻想
日清戦争での勝利の結果、日本の軍官民の多くが、戦争は国家として儲かる、個人についても立身出世のチャンスである、と考えるようになります。現代的に言い換えれば、「戦争ビジネスモデル」が共通認識化してしまいます。戦争で儲かる、というのは、本来めったに起こらないことで幻想であるのに、それが共通認識化してしまった状況の詳細を確認します。
7c 日清戦後の軍拡
日清戦後の帝国議会では、巨額の軍拡予算がたいした反対を受けずに成立することになります。実際に、日清戦後の日本が行った軍拡は、どの程度のものであったのか、だけでなく、軍拡が日本の経済成長にどのような制約をもたらしたのかについても、確認します。
まずは、日清戦後の列強による中国分割競争、東アジアの不安定化についてです。