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軍事史・軍事戦略などに関する参考図書のうち、海外の著作も挙げておきます。 ポール・ポーストの『戦争の経済学』は、軍事史・軍事戦略とは言いがたい本ではありますが、軍事を経済学的に考察しているという点から、ここに挙げています。
マーチン・ファン・クレフェルト (佐藤佐三郎訳)
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原著は、 Martin van Creveld, Supplying War 1977。本書の主題は、「軍事史家によってしばしば無視」されている、軍隊への補給問題、すなわち日清戦争でもカイゼンが必要な重要課題であった兵站輜重問題です。 16世紀中葉のスペインによるオランダの反乱抑圧戦から始めて、とりわけ19世紀以降にページ数が大きく当てられ、ナポレオン戦争、プロイセンの普墺・普仏両戦争、第一次世界大戦の西部戦線での電撃戦、第2次世界大戦でのドイツの対ソ戦・ロンメルの北アフリカ作戦・連合軍のノルマンディ上陸作戦などでの軍事補給の実態が、具体的に論じられています。 平壌戦での野津師団長のような悪い例もあったものの、日清戦争での日本軍は、概して補給に非常に大きな努力を行い、カイゼンに努めていたと言えることが、こういう本の記述と対比することで、確認できるように思います。 |
それと比べて、昭和前期の日本軍は、どうして補給への関心をほとんど払わなくなってしまい、無理な作戦を重ねたのでしょうか。この点で、日本軍には著しい劣化があり、昭和前期の戦争は負けるべくして負けた、と言わざるを得ないように思います。
本書は、本ウェブサイト中、「日清戦争の経過−序盤戦B 平壌の戦い」、および「同−中盤戦@ 九連城など」のページで引用等を行っています。
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原著は、Paul Poast, The Economics of War, 2006。 末尾の「訳者解説」に、本書は、戦争について簡単な経済理論を使って分析することで、総合的に考える枠組を提供しようというものであるが、簡単な経済理論を説明するため戦争を題材に使った本でもある、とあります。まさしくその通りの内容です。 戦争や軍備に対する左右の特定の観念を前提にせず、すなわち正邪論におちいることなく、現実のデータに基づいて一貫して定量的に分析しているところに、本書の良さがあると思います。 本文でもご紹介した「戦争の経済効果」のほか、「軍隊の経済学」、「安全保障の経済面」が論じられています。具体的には、徴兵制の場合と志願制の場合の費用と効果の差、防衛産業と通常の産業の相違や、内戦やテロリズムまで、戦争と軍事に関する幅広い内容が経済学的に論じられています。 |
もう少し具体的に見てみると、例えば総志願制と徴兵制の費用対効果の対比では、総志願制の軍隊では、兵員に民間と競合できるだけの賃金を支払わなくてはならず、労働の値段が徴兵制より相対的に上がる。しかし徴兵制は、適性のない人を軍隊に入れて向かない作業に従事させることになるので、予算費用は低くても機会費用は高くなってしまう。総志願制の軍隊の政府は、労働の値段が高いので、より資本集約的な軍隊をめざす、と分析されています。
本書には、訳者による「事業・プロジェクトとしての戦争」という論文が付録として収録されています。確かに、戦争を事業として見てみると、という観点は本書には抜けているので、良い付録となっています。この中で、日清戦争と自衛隊のイラク派遣とが、実例として取り上げられ、「事業の収益性」という観点から分析されています。
せっかくの分析ですが、日清戦争について、戦争費用(支出):2335億円、賠償金(収入):3682億円とされ、3ケタ間違ってしまっている(実際は2.3億円と3.6億円)ところが、ちょっと残念です。また割引率と現在価値を使って事業の採算性を評価することは、企業の中で新規事業計画や他企業の買収を立案評価する業務に関わっている人にはおなじみの手法ですが、そうした業務経験のない方には理解が少々難しいと思いますので、とくに割引率はどういう考え方で設定されるかについて、もう少し解説があると良かったのではないか、またこの論文には注記が一切なく、参考図書などが挙げられていると、もっと分かりやすくなって良かったのではないか、という気がしています。
本書は、本ウェブサイト中、「戦争の結果−日清戦後の軍拡」のページで、引用等を行っています。
このウェブ・サイトでは、日清戦争当時の日本軍の戦略を、日本史上でかつて実行され成功した戦略、具体的には豊臣秀吉のそれと比較する、という作業も行いました。次は、秀吉の天下統一戦争に関する参考図書です。